これから古民家に住む方へ。事前に知っておきたい、古民家が寒い理由って?寒さ対策・リフォーム方法をご紹介
近年では「地方創生政策(※1)」の影響もあり、古民家で田舎暮らしをする方も増えているようです。「古民家(※2)」とは、建築後50年経過した住宅のこと。国が制定する文化財登録制度においては、築後50年以上経過したものが対象となります。古民家は断熱材が使用されていないケースも多く、冬は隙間風の影響を受けて冷え込むことも……。
家の室内が寒くなると、風邪、体調不良などを引き起こす可能性が高くなるので、冷えを感じたら早急な対策を行いましょう。本記事では、古民家の中が寒くなる理由を踏まえた上で、寒さ対策、リフォーム方法を紹介していきます。
※1 地方創生政策……内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局、内閣府地方創生推進事務局による、地方創生の推進に向けた施策のこと。
参照:地方創生に関する取り組み
※2 参照:歴史的建築物の活用に向けた条例整備ガイドラインについて(概要)(PDF形式)
目次
古民家にいると寒く感じるのはなぜ?古民家が寒くなる理由
古民家の多くは断熱材が入っていないケースが多く、冬は室内が寒くなります。まずは古民家の中が寒くなる理由について、具体的に紹介します。
- 断熱材が使用されていない
- 単板ガラスを使っているケースが多いため
- 経年劣化によって建物自体が歪み、隙間が増えやすい
断熱材が使用されていない
古い家の場合、最初から断熱材が使用されていないケースもしばしば。そもそも、日本の住宅業界において断熱材の性能が注目され始めたのはそれほど昔の話ではありません。断熱材が日本の住宅で断熱材が普及したのは、1980年に「省エネ法」という法律が制定されたことがきっかけとされています。
省エネ法とは、資源エネルギー庁が設定した「エネルギーの使用の合理化等」に関する法律のこと。省エネ法の制定により、住宅を断熱することで「エネルギーの無駄使いを無くそう」という流れが生まれ、断熱材の普及が進みました。築50年を超える「古民家」は「省エネ法」が制定される前の建物であることから、断熱材が入っていないケースが多いようです。
※参照:省エネ法 省エネ法とは
※参照:断熱材の意外な歴史その1
単板ガラスを使っているケースが多いため
古民家など築年数の古い家では、単板ガラスを窓に採用しているケースが多いです。単板ガラスとは、一枚板のガラスで出来た「板ガラス」のこと。一般的に、表面に微細な凹凸をつけた不透明なガラスである「すりガラス」、型模様のついた「型板ガラス」も単板ガラスの一種とされています。
単板ガラスは、ガラスが一枚のみであることから外気の影響を受けやすく、寒い冬の時期は室内が寒くなります。寒さを防ぐためには、複数のガラスから成る「複層ガラス」にリフォームするなどの対策を取ると良いでしょう。窓ガラスが「単板ガラス」がどうか見分けたい場合は、ガラスに向かってライトを当ててみるのがおすすめ。たとえば、スマホのライトをガラスに当てた時に、反射するライトの個数が一個のときは単板ガラス、複数なら複層ガラスとなります。古民家の窓が「単板ガラス」か確認したい場合は、この方法で確認してみてください。
経年劣化によって建物自体が歪み、隙間が増えやすい
築年数の経過した「古民家」は、木材などの劣化により建物自体が歪みが生じることも。建物に歪みが生じると、そこから隙間ができ、隙間風の影響を受けやすくなります。家に隙間があると室内の暖かい空気が外に逃げてしまうので、暖房をつけても室内が温まりません。暖房の効果を高めるには、「家の壁、床に断熱材を施工する」など、家の気密性を高める対策が必要となります。断熱工事に関する内容については「断熱工事とは?費用の目安や効果・注意点から一緒に行うべき遮熱工事まで紹介」で紹介しているので、合わせてご覧ください。
個人でも対策可能!古民家の寒さ対策
古民家の寒さは、個人でも対策可能です。まずは、個人でできる「古民家の寒さ対策」について紹介します。
- 隙間テープを窓サッシに取り付ける
- ガスファンヒーターを設置する
- 天井にシーリングファンをを設置する
隙間テープを窓サッシに取り付ける
古民家は、経年劣化により家に歪みが生じ、窓サッシに隙間が生まれることも……。窓サッシに隙間があると、隙間風の影響により暖房をつけても室内がなかなか暖まりません。窓サッシの隙間を埋めるには、隙間テープが有効です。隙間テープは、その名の通りドア、窓の隙間に貼るテープのこと。窓サッシに隙間テープを取り付けることで、窓の隙間から入る冷気を防ぐことができます。
隙間テープには、伸縮性のあるスポンジにテープがついています。テープをはがしてサッシに取り付けることで、窓サッシの隙間から入る隙間風の侵入を防ぎます。
ガスファンヒーターを設置する
古民家は天井が高く、部屋が広いことから「暖房効率が悪い」というデメリットも。そこでおすすめなのが、室内を素早く暖められる暖房器具「ガスファンヒーター」です。ガスファンヒーターとは、温風で室内をあたためる暖房器具のこと。ガスファンヒーターの魅力は、なんと言っても圧倒的な速暖性、広範囲をすぐに暖められるパワフルさ。ガスファンヒーターなら、天井が高く部屋の広い古民家でも、隅々まで暖かい風を届けることができることでしょう。
天井にシーリングファンをを設置する
窓が多く天井の高い古民家は、家の構造から暖房の効きが悪くなってしまいがち。とくに窓の多い古民家では、コールドドラフト現象(※ )も起こりやすいので注意が必要です。
※ コールドドラフト現象……コールドドラフト現象とは、暖房器具によって温められた部屋の空気が、冷たい窓ガラスによって冷やされ床面に下降することにより、室内の上部と下部とに大きな温度差が生まれる現象。
引用:コールドドラフト現象とは? 部屋が寒い原因と対策 – 手軽にレンタル「あるる」
そもそも冷気は暖気より重いため、冷たい空気が足元に停滞してしまうのです。そのため、いくら暖房器具で部屋を暖めても、足元は冷えを感じやすいまま……。コールドドラフト現象が起こると、底冷え、体の冷えによる体調不良などを招く恐れがあるので、早急な対策を行いましょう。コールドドラフト現象を防ぐためには、シーリングファンなどで空気の循環を促すなどの対策が必要となります。
たとえば、天井にシーリングファンを設置することで、暖かい空気を室内全体に循環させ、寒い冬の時期も快適に過ごせるようになります。さらに暖房効率を向上させる働きにより、コールドドラフト現象の防止にも役立つことでしょう。
リフォームによる古民家の寒さ対策
古民家の寒さ対策には、気密性を高める断熱リフォームなどがあります。本項目では、古民家の寒さ対策に効果的なリフォーム方法について紹介します。
- 蓄熱性の高いタイルを土間に使用する
- 窓を複層ガラスにリフォームする
- 古民家の壁、床に断熱リフォームをする
- 遮熱シートを壁、床下に施工する
蓄熱性の高いタイルを土間に使用する
古民家は、一般的に「土間」のある造りの家が多いです。土間とは、床を張らずに土足で歩くように造られた空間のこと。「古民家」など伝統的な日本家屋の多くは、玄関付近に土間があり、主に台所、作業場所、納屋などに利用されていたようです。土間の代表的な素材は、主に以下の4種類となります。
- コンクリート
- モルタル
- タイル
- 天然石
いずれの素材も硬くて丈夫なため、土足で歩く土間の床材に適しています。ただし土間がコンクリート、モルタルは熱伝導率が高いので外気の影響を受けやすく、冬は底冷えを感じることも……。 また、大理石などの天然石は熱を蓄積できないので、冬は足元の冷えを感じることもあるようです。そこで冬の寒さ、底冷えを防ぎたい場合は、蓄熱性の高い「タイル」を土間に使用するのがおすすめ。タイルを土間に使用することで、家の暖かい気を蓄える働きによって、寒い時期も暖かく過ごせるようになります。
窓を複層ガラスにリフォームする
古民家は、窓に一枚板のガラスで出来た「単板ガラス」を採用しているケースが多いです。単板ガラスは1枚のみのガラスでできていることから、外気の影響を受けやすいデメリットも……。
そこで家の断熱性を高めたいのであれば、単板ガラスの窓を複層ガラスにリフォームするのがおすすめ!窓を複層ガラスにリフォームすることで、室内の気密性がアップして暖房の効きが良くなります。複層ガラスとは、2枚の単板ガラスを組み合わせて作られたガラスのこと。複層ガラスは、2枚のガラスの間に「中空層」ができることで、優れた断熱性能を発揮します。窓を複層ガラスにすることで部屋の気密性がアップし、暖房の効きが良くなるので寒い冬の時期も温かく過ごせることでしょう。
古民家の壁、床に断熱リフォームをする
古民家の壁、床を断熱リフォームすることで、家の気密性がアップします。断熱リフォームには、主に以下のような方法があります。
- 壁、床に断熱材、断熱パネルを入れる。
- 断熱塗料で塗装する。
断熱材とは、空気の層によって熱の伝わりを遅らせる素材のことです。
断熱材を壁、床に施工することで、室内の熱が外に逃げるのを防ぐ働きがあるので、寒い冬も快適に過ごせることでしょう。断熱塗料とは、熱伝導を抑える効果を持った塗料のこと。断熱塗料を外壁、内部などに塗布することで、家の断熱性・気密性を向上させる働きがあります。家に断熱材の施工、または断熱塗料を用いて断熱リフォームすることにより、家の気密性・断熱性がアップするので、寒い時期も暖かく過ごせるようになります。
なお、断熱材には多くの種類があり、それぞれ特徴が異なります。たとえば古民家の場合は、発泡プラスチック系の断熱材である「スタイロフォーム」がおすすめ。スタイロフォームは湿気をを遮断する効果があるので、湿気を吸収しやすい木造住宅、古民家の断熱材に適しています。
断熱材の効果、役割、種類については「断熱材とは?断熱材の役割と効果、種類についてご紹介」でも詳しく解説していますので、ぜひ合わせて読んでみてください。
遮熱シートを壁、床下に施工する
防寒対策のリフォーム方法には、遮熱シートを壁、床下に施工する方法もあります。遮熱シートとは、輻射熱を反射する金属製アルミシートのこと。遮熱シートを壁、床下へ施工することで、室内の熱を室内側へ反射させる働きがあるので、寒い時期も暖かく過ごせます。遮熱シートはアルミの純度が高いほど反射率は高くなるので、遮熱効果を高めたいのであればアルミ純度の高い遮熱シートを使用しましょう。
遮熱による寒さ対策については、「遮熱による寒さ対策とは?遮熱対策の種類、寒さ対策の方法を紹介」で解説していますので、合わせて読んでみてくださいね。
古民家の寒さ対策は、温めた熱を外へ逃がさないことが大切
古民家など、築年数の古い住宅は断熱材を使用していないことも多く、冬は寒さを感じることも。古民家の寒さ対策をするためには、家の断熱性・気密性を高め、室内の熱を逃さないように家全体で対策をすると良いでしょう。たとえば、家の壁、床などに断熱材を施工することで、室内の気密性がアップするので寒さ対策に効果的です。ただし断熱材はエアコン型の対流熱、湯たんぽ型の伝導熱への対策が可能ですが、電気ストーブや日射による輻射熱には効果を発揮しません。輻射熱の対策を行うのであれば、遮熱効果のある「遮熱材」を併用するのがおすすめです。
輻射熱を正しく理解するために、まず「3つの熱移動」から説明させていただきます。熱の伝わり方には、「伝導熱」「対流熱」「輻射熱」の3種類があります。これら3種類はそれぞれ性質が異なり、断熱材で防げるのは「伝導熱」と「対流熱」のみ。「輻射熱」を防ぐには、遮熱材を使用しなければなりません。
また、熱対策を行う際には、熱移動の割合が多い熱について行うと、より効果を高めることができます。次に、建物内における熱移動の割合について紹介します。
- 伝導熱…湯たんぽ、カイロ 5%
- 対流熱…エアコン、温風ヒーター 20%
- 輻射熱…電気ストーブ、太陽 75%
上記の表からもわかる通り、断熱材で対策できる熱は熱全体の25%(伝導熱の5% + 対流熱の20%)のみ。残りの75%は輻射熱が占めていることから、建物内の熱対策には輻射熱への対策が重要と言えるでしょう。高価な断熱材を導入したとしても、熱の原因が「輻射熱」の場合、その断熱材はあまり効果を発揮しません。まずは熱の原因を知ることが重要で、原因を知れば正しい熱への対策を行うことができるようになります。古民家の寒さ対策をする場合は、断熱材、遮熱シートを組み合わせることで、より高い防寒対策が可能となります。
まとめ
古民家は断熱材が施工されていないことも多く、気密性、蓄熱性能が低いこともしばしば。断熱性能が低いため、冬は暖房を使用しても室内の熱が外に逃げやすいことから、なかなか暖まりません。断熱性の低い古民家では、寒さ対策を行うことで冬も暖かく過ごせるようになります。古民家の寒さ対策は、具体的に以下の通りです。
寒さ対策(個人)
- 隙間テープを窓サッシに取り付ける
- ガスファンヒーターを設置する
- 天井にシーリングファンをを設置する
リフォームによる古民家の寒さ対策(業者)
- 蓄熱性の高いタイルを土間に使用する
- 窓を複層ガラスにリフォームする
- 古民家の壁、床に断熱リフォームをする
- 遮熱シートを壁、床下に施工する
古民家は、壁、床に断熱リフォームを行うことで、家の気密性をアップさせることが可能です。さらに遮熱シートを壁の内側に施工することで、暖房の熱が外に逃げるのを抑える働きにより、省エネ効果も期待できることでしょう。家の寒さを感じた時は、上記で紹介した対策、リフォーム方法などを行い、寒い時期も快適に過ごしてくださいね。
編集部
自宅や工場の熱問題に取り組む、株式会社ライフテックの編集部が執筆・監修を行いました。
当社は、断熱材だけでは防げない輻射熱を97%カットすることができる遮熱材「サーモバリア」を販売しております。サーモバリアは、住宅や工場などの屋根や壁に使用することで、夏の太陽の輻射熱による建物の温度上昇を抑え、体感温度を下げることができる、自宅や工場の熱問題の解消につながる製品です。
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